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生涯学習講座

令和4年度 冬の生涯学習講座のご報告


2023年2月5日(日)、冬の生涯学習講座がZOOMライブ配信にて開催されました。
今回の講座テーマは「ダウン症候群を有する子供の地域活動」長野保健医療大学 認定理学療法士(発達障害)山本良彦先生にご講演いただきました。

桃李会会員の皆さまはきっと、山本先生をよくご存知ですよね!私も在学中にとてもお世話になりました。特に「あんぱんくらぶ」の活動に参加させていただいた時の思い出は今でも強烈に残っていて、今回の講演は当時を思い起こしながら聞き入ってしまいました。また、地域の理学療法士・作業療法士の方や、健康指導員の方などのご参加もあり、山本先生のご活躍の幅広さを感じました。

講演内容についてです。
前半は、染色体異常症・特にダウン症についてのお話から始まりました。
染色体の構造、減数分裂・体細胞分裂といったところから始まり、ダウン症候群が発生する染色体の不分離のメカニズムを、動画での解説もありとても分かりやすく学ぶことができました。ダウン症候群は、母体の年齢や親がダウン症であることで発生の確率が高くなるそうですが、染色体の不分離という現象は偶然起こるものであり、ダウン症候群を有する子供が生まれる可能性は誰にでもあるのだそうです。
ダウン症候群の身体的特徴のひとつに「耳後頸部皮膚のたるみ」があり、この皮膚のたるみは赤ちゃんがまだ胎内にいる時の腹部エコー検査で捉えることができるいう解説がありました。実は私は、出生前診断でお腹の赤ちゃんがダウン症候群かどうか判断できるということを、この講演を聞いて初めて知りました。講演中、近年の晩婚化のことなどにも触れていたので少し調べたところ、出生前診断でダウン症候群陽性との結果を受けた場合の中絶率はおよそ9割なのだそうです。その理由には身体的または経済的に産み育てることが困難であることが挙げられ「命の選別」や「倫理観」といった言葉だけでは語れない大きな問題がある、という記事がありました。
そういった背景も踏まえ、ダウン症候群を有する子供をご家族だけではなく地域社会でも支え、継続していくことはとても大切なことであり、また難しいことでもあると思いました。

後半は「あんぱんくらぶ」での活動についてお話がありました。
あんぱんくらぶは2004年に発足し、年4回の開催ペースでなんと18年に渡って継続して活動しています! 2019年には、公益財団法人「運動器の健康・日本協会」の優秀賞に選ばれ、信濃毎日新聞にも掲載されました。
あんぱんくらぶには、0歳〜12歳くらいまでのダウン症候群の子どもとその親御さんが参加され、長野保健医療大学の学生や近隣施設で働くリハビリ関連職種のボランティアがサポートにつきます。子どもたちの身体機能測定や運動能力検査、レクリエーションを実施し約2時間くらいの構成です。
山本先生はこの活動を通して、子どもたちの発達の様子をご家族に知っていただき「こんなことができるんだ」と気付いてもらう機会にしたい、とお話しされていました。

冒頭でも書きましたが、私は在学中にあんぱんくらぶの活動に参加したことが何度かあります。自由奔放に動きまくる子どもたちを追いかけてなんとか股関節の可動域測定をしたらものすごく体が柔らかくて、中国雑技団のような開脚姿にびっくりしたり、関節が抜けてしまいそうで少しゾッとしたり、場面場面での思い出が強烈に残っています。こういった機会を与えていただき山本先生に鍛えていただいたおかげで、コミュニケーションだったり、子ども(患者様)に付き合う・振り回される、ということに対しての耐性が学生のうちからついていたんだなぁと、今になって思います。
現在でも毎回学生さんが参加され、レクリエーションは学生さん主体で実施しているそうです。山本先生もハッとするようなレクリエーションの企画や、学生さん視点からの工夫が取り入れられ、子どもたちも毎回楽しんでいるとのことでした。
コロナ禍の昨今、あんぱんくらぶはグループ活動から個別での活動へ形態を変え、子どもたちへの支援を継続しています。個別対応での活動にもメリットがあるという発見から、今後はグループ・個別両方の形態で活動を実施し、年8回の開催を目指すそうです!

ダウン症候群に限った話ではなく、高齢者、障がい者など地域で支援を必要としている方はたくさんいると感じています。リハビリを頑張って医療の場を卒業し、地域で暮らしていくそれぞれの方のライフスタイルに、あんぱんくらぶのような継続して寄り添っていける活動がもっともっと活発になっていけばいいな、そういった地域の場でリハビリ関連職種がもっと活躍していければいいな、など、色々なことを考えさせられる講演でした。
現役の学生さんを超えるアイディアや気づきを捻り出せるよう自分を鍛え直しに、今年はあんぱんくらぶへ参加したいと思います。

以上、研修会のご報告とさせていただきます。
ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。