令和3年度 春の教養講座のご報告
5月13日、長野保健医療大学主催の春の教養講座が開催されました。
今回のテーマは「医療行為の同意をめぐる成年後見制度と意思決定の論点」で、長野保健医療大学 熊本圭吾教授にご講演いただきました。
成年後見人(制度)とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどの理由で判断能力が不十分な方々の権利を守るため、家庭裁判所が支援する者を選び、本人を法律的に保護・支援する制度です。
昨今の医療・介護現場での高齢者支援では、多くの場合、認知症を持つ方のサポートが必要になっていると感じています。認知症の症状は多種多様です。それに加え高齢者の方々は、今まで生きてきた人生の中で様々な経験をされ、それぞれ独自のご性格があります。日々、現場で高齢者の方々のケアに関わっていると、お一人お一人に対して全く違う方法で介入することが必要とされ、本当に難しいと感じます。
そんな中で、今回の講座でお聞きした、本人の「意思決定能力」をどんな風に評価し、支援していくか、というお話はとても興味深かったです。
私は介護施設に勤務していますが、入居者の皆さんは程度は違えど認知症を持っている方がほとんどです。「俺は死ぬまでタバコも酒もやめるつもりはない」と話される方に、本当にその通りタバコもお酒も提供していいものだろうか……なんていう思いを抱くことはよくあることでした。本人の最晩年の人生が、悔いのないものになるならそれでいいんだと、ご家族や、ケアチームのスタッフ同士で話し合い、今まで納得してきたのですが、今回の講座で改めて、本人の意思決定を最大限尊重する、自由の制約は可能な限り最小限に抑える、また、その時々のタイミングによって、選べる選択肢をなるべく多く持っておくこと、など、本人にとっての「最善」を検討する方法やヒントを知ることができ、より具体的に視野を広げることができました。
意思決定能力、という目には見えないものを、他者がどう捉えるかということはとても難しいと思います。「私は年寄りで頭もボケててよくわからないから、皆さんで決めてちょうだい」というスタンスの方も多くいるように感じますが、遠慮しているだけで本当はこうしたい!という思いがあるのか、それとも本当にわからないからおまかせでいい、のかどうか……。こういった判断の場面では、やはり日頃からのコミュニケーションの中で見えてくるものが大切になると思います。今回の講座では、本人のエンパワメント、特に、本人が自信を持って意思決定を行うことができるためには、本人の自尊心や達成感が日頃から満たされていることが重要である、というお話がありました。
日常的に、本人が自ら意思決定を行う機会に接し、成功・失敗に至る過程を経ながら、「自らの意思決定が他者に尊重された」という経験を本人が得られるよう、後見人等も含めた本人に関わる支援者らが協力して支援をする(エンパワメント)環境が整備されることが求められています。
少し視点を変えて、これからのケアに取り組もうと思いました。
以上、研修会のご報告とさせて頂きます。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。