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生涯学習講座

令和5年度 冬の生涯学習講座のご報告

2024年2月4日(土)冬の生涯学習講座がzoomライブ配信と来場型で開催されました。
今回の講座は「災害におけるリハビリテーションの関わり方と長野JRATの今後の取り組み」というテーマで佐久総合病院の理学療法士であり長野JRAT運営に携わられている大池遼先生にご講演頂きました。

はじめに近年増加傾向にある災害についての概要をご説明頂きました。


災害というと地震をイメージしやすいと思いますが、それだけではありません。災害とは暴風、豪雨、洪水、津波、噴火など多岐にわたる異常な自然現象又は大規模な火事や爆発によって起こされた被害として定義されています。また人的な被害(戦争)や昨今の新型コロナウイルスなども広い意味での「災害」として捉えることができるそうです。そのような災害時に生じる医療の側面から見た問題としては、医療の急激な需要増加とインフラ障害に伴った医療供給の制限が挙げられていました。災害時、医療の需要と供給のバランスが悪くなるなど劇的に変化する環境の中で、外部や内部から医療の手をどれだけ差し伸べる事ができるのか、医療を提供するシステムがどれだけ構築されているのかがとても重要であると感じました。

災害時に活動する団体はJRATのみではなく、様々な団体が活動を行います。主な団体としては下記に挙げられる通りです。
DMAT:災害派遣医療チーム 災害発生時に迅速な医療支援(48時間程度)を提供する
JMAT:日本医師会災害医療チーム 地域の医療機関などど連携して医療ニーズの供給
DPAT:災害派遣精神医療チーム  災害による精神的なストレスを感じている方へのケア
JRAT:日本災害リハビリテーション支援協会 災害時のリハビリテーションを担う
DHEAT:災害時健康危機管理支援チーム 災害時の公衆衛生的な面の支援
他にも様々な支援団体が災害時に足りなくなっている医療の供給を補足します。
災害時には自分達では手が届かない部分の支援に幅を持たせるためにも、他団体の事を十分に理解しておくことが重要であるとわかりました。

今回のメインテーマであるJRATとは、災害時に被災者や要配慮者の生活不活性病や災害関連死などの予防に関する適正な対応を可能とするためのチームとして定義されています。主な支援内容としてリハビリテーションの考え方をベースに災害時の環境評価や対象者の状態を評価して必要なアプローチを行います。具体的には段ボールベッドの設営、トイレ設置や動線の確保、移動能力を軸に据えた評価を行っているそうです。また、生活不活性病の対策において専門性を持って介入を行います。ICFに基づいて考えると環境因子の大幅な変化により活動や参加の機会が失われ、最終的に心身機能に重大な問題が生じていくことで災害時には生活機能の低下をもたらすとされています。リハ職種はICFに基づいた考え方を得意としており、被災者個人に寄り添いながら適切な支援が出来るのではないかと思いました。

長野JRATは地域JRATとして2023年度に発足されています。活動の内容は災害支援チームの育成、県内の関係機関や団体との連携強化、地域住民への啓発、災害時の直接的な支援が挙げられています。現在はそれぞれの取り組みを強化しており、徐々にその認知度を高めているとの事でした。

数年前までは「忘れた頃にやってくる」と言われていた災害も、昨今では”忘れる間もなく大規模な災害が起こりうる状況”となっており、災害リハビリテーションの需要も高まっています。実際の現場での取り組みでは、各スタッフの専門領域以外の事にも介入する事が多いそうです。身近に起こりうる災害について当事者意識を持ちながら準備をしておく事や組織全体の意識を高めていく事の重要性について学ぶ事が出来ました。

以上、簡単ではありますが今回の生涯学習講座の報告とさせていただきます。ご参加頂いた皆様、ありがとうございました。