令和6年度 冬の生涯学習講座のご報告
2025年2月16日(日)、冬の生涯学習講座が開催されました。
今回のテーマは、高齢者の自動車運転!!
長野県で生活するためには、自動車の運転は欠かせないですよね?患者さんや利用者さんのためだけでなく、自身の家族のためにも『高齢者の自動車運転について知りたい!』と思った方はこの文章だけでも読んでみて下さい。
また、今回の講師が桃李会の広報局員ということもあり、下記の文章は講師が作成した講座の要約文になります。是非ご一読頂けると幸いです。
【医療職が高齢者の自動車運転を考える:真田自動車学校 理学療法士・教習指導員 宮下卓也】
高齢者の自動車運転と聞くと『認知症や免許返納』『アクセル・ブレーキの踏み間違い事故』などをイメージされる方が多いと思います。ただ、今回は高齢運転者の『自粛』をテーマに講演をさせて頂きました。
自粛と聞くと『運転をやめること?』と思われる方がいるかもしれませんが、やめるのではなく『運転を少しずつ制御すること』が自粛になります。
急に運転をやめてしまうと活動量の低下・心身機能の低下・抑うつリスクの増加など、様々な弊害が生じる可能性が高くなります。しかし、徐々に運転機会を減らすなどの制御をすることで他の移動手段を獲得することができ、活動量を維持しながら免許返納に向かっていくことができます。それだけでなく、運転を制御することで安全運転を継続できる可能性が高くなると言われています。このように、自粛は多くのメリットが報告されているのです。
では、どうすれば自粛をすることができるのでしょうか?それは『教育&運転のフィードバック』によって自身の運転を認識してもらうことが、自粛を促すポイントになります。
教習所で行っている高齢者講習では、必ず『教育&運転のフィードバック』を行っています。これが運転を自己認識する機会になり、危険な運転行動を避ける『自粛』に繋がると言われています。
例えば、反応が鈍くなってきている様子の方には『飛び出してきた車に瞬時に反応するのは難しいので、見え難い交差点や狭い道を避けて通ると良いですよ』とか…焦ってしまう方や視力が衰えてきている方には『夕方など混雑して暗くなってくる時間帯は避けると良いですよ』とか…高齢者講習では、道や時間帯を変えるなど行いやすい自粛から実施してみるよう促しています。
医療現場でも、①信号がない交差点での出会い頭事故が多いという情報の教授。②普段利用している道の再検討。③チェックリストなどを用いて今までの運転を振り返る。などの方法で『教育&運転のフィードバック』を行ってみて下さい。まずは危険な道や時間帯を避けるという小さな自粛でも、その後に安全運転を継続するための大きな一歩になるかもしれません。
そして、一度自粛ができた後は定期的に自粛を繰り返すことが推奨されます。
例えば、道を変更した半年後には『通院は家族の運転で行ってみてはどうですか?』や『近所の友人の家には自転車で行ってみてはどうですか?』など、できる自粛を定期的に繰り返すように促してみて下さい。そうすることで、他の移動手段を獲得し活動量を維持しながら免許返納に向かっていくことができます。
この『自粛を繰り返す』という考え方は『運転終活』とも呼ばれており、日本老年学会や日本安全運転医療学会などでも紹介されています。皆さんも担当されている患者さんや利用者さんに『運転終活』を促してみませんか?そうすることで、長野県という運転が欠かせない地域で生活する方でも、スムーズな免許返納に繋がっていくかもしれません。
以上、簡単ではありますが、冬の生涯学習講座の要約とさせて頂きます。今回の講演やこの文章をきっかけに『高齢者の自動車運転についての考え方』を普段の臨床の中に取り入れてみて頂けると幸いです。
今回ご参加頂いた皆さま有難うございました。次回の生涯学習講座もお楽しみに!!!