いろいろな経験値を
上げるのが大事。
医療法人研成会 諏訪湖畔病院 戸澤 ひかり さん
理学療法学専攻1期生(2019年3月卒)
主に脳血管疾患や整形疾患の患者さんのリハビリを担当しています。日常生活が支障なく送れるよう、機能回復を図ることを目的に、もともと歩けていた方は自力で歩行ができるまで、そうでない方や症状の程度が重い方は、椅子や歩行器など移動器具を使って自力での移動が可能になるよう、器具の乗り降りや自走の練習をしています。
リハビリはひたすら地道な作業の繰り返し。目的がないと「何のためにやっているのか」がだんだん分からなくなり、患者さんにとっては辛い時間になってしまいます。そこで、「リハビリをしましょう」「歩く練習をしましょう」ではなく「食堂まで歩いてご飯を食べにいきませんか?」「売店で一緒に買い物しましょう!」などリハビリの時間を「楽しみ」に変えていただけるよう、声掛けを工夫しています。
コミュニケーション力向上のためには、とにかく「いろんな人と話す」ことが大事だと思います。ご高齢の方は、知識が豊富。お聞きしたお話を「ネタ」として蓄積していくことで、他の患者さんとの会話がどんどん広がるようになりました。恐れずコミュニケーションを取り続けることが、コミュニケーション力を上げる最も有効な手段ではないでしょうか。
また、患者さんとのコミュニケーションが重視されがちですが、現場に出て感じたのは他の医療従事者との連携の大切さです。患者さんにとってより良い治療を実現するためには、看護師、介護士さんとのコミュニケーションが不可欠。それぞれの方の立場や状況、相談するタイミングに配慮しながら、治療に理解を得られるよう働きかけています。
大学以外の「勉強の場」を大切にしてほしいですね。私は学生時代、障害のある方のスポーツクラブで、大会の運営や審判のボランティアに携わりました。今、自分を表現する場がなかなか見つからないと悩む患者さんに紹介したり、回復後の1つの目標として提案したり、その時の経験を活用できています。
高齢者施設に就職して4年。リハビリを通して利用者の方の自立支援をしています。デイケア部門を3年半ほど担当し、現在は入所者の方々の「在宅復帰」に向けたリハビリを行っています。皆さんは体の状況も既往歴も異なるので、食事や入浴などどこまで自分でできて、どんな介助が必要か、動作を1人ひとり確認しながら個別のリハビリを行っています。お1人ひとり性格も違いますし、その日や時間帯によって気が進まない―ということも。その時の様子に合わせて声をかけ、前向きに感じてもらえるような話し方も意識しています。
どの分野でもコミュニケーションは大切です。患者さんの一日の中で、私が関われるのはほんの数十分。日常生活の中にもリハビリを取り入れてもらいたいと、具体的な要望を介護福祉士とよく話し合います。また、私の知らない時間にそれぞれの視点で利用者を見ている作業療法士(OT)や言語聴覚士(ST)とも情報共有・連携を密にして、よりリハビリの効果が上がるよう心がけています。例えば食事のスプーンに関して、OTは口に運ぶまでの動作を、STは嚥下の状況をよく見てくれています。それをもとに、持ちやすい形を工夫したり、一口の量も調節することができます。利用者さんを支える「チーム」として、それぞれの役割を発揮するためにも「連携」できる関係性を大切にしていきたいです。
周囲では病院への就職を考えている友人が多かったですが、私は最初から施設へと決めていました。先生から、施設に入所されている方は疾患もさまざまで既往歴も多いと聞いており、施設で働きながら自分の力を伸ばしていきたいと考えたからです。
本学に来る求人は圧倒的に病院関連が多かったので少々心配でしたが、先生から施設を紹介していただけたおかげでスムーズに決まりました。不安なことは何でも先生に相談するのがいいと思います。とても親身に対応してくださいますよ。
私は、誰からも「話しやすい」「相談しやすい」と感じてもらうために、自分と異なる意見に対しても「そうだね」と一度受け止めてから話すよう、学生時代から意識していました。これから医療職を志す皆さんは、大学での専門知識の学びもさることながら、先生や友人など「人との関わり」を大切にして欲しいです。実習でもその後の人生でも、必ず役立ちますよ。
現在、入院されている患者さんを対象に、編み物やプラモデルといった〈ものづくり〉を通し、「その人らしさを表現できる場」をつくることで機能の回復を図っています。
コロナ禍に入ってからは面会も難しく、入院患者さんにとって「外とのつながり」が絶たれてしまっている状況が続いています。その中で「作業療法の時間が楽しみなんだ」と夢中になって取り組んでくださる患者さんの様子を見ていると、この仕事に非常にやりがいを感じる一方で、作業療法の果たす役割がますます大きくなっていると実感しています。「息抜きの時間」「外とのつながりを感じる機会」としても患者さんに楽しんでいただけるように、季節を感じるモチーフを取り入れるなど工夫をしながら取り組んでいます。
1人ひとりの患者さんと面談をしながら、それぞれ「どんなことができるようになりたいか」と目標を立てて治療にあたりますが、患者さんの中には、言葉のコミュニケーションが難しい方もいらっしゃいます。そんな時は、文字や図に落とし込んで「見える化」すると、「何ができるようになったか」や今後の課題などをすんなりと理解してくださるので、相手に合ったコミュニケーションが大切だと感じています。
また、作業療法はグループで行うことが多く、「1対1」の時間がどうしても薄くなってしまいがちなので、患者さん1人ひとりを注意深く見つめる機会を意識的につくるようにしています。
大学時代の「実習」は、作業療法士としての知識を深めるだけでなく、1人の社会人としてマナーやふるまいを学ぶ場としても非常に貴重だと感じました。あいさつや身だしなみはもちろん、率先して清掃するなど、周りを見て「いま自分が求められていることは何か」を察知して動くのも大切なスキル。後輩の皆さんにはぜひそれを肌で感じ、学んでほしいです。
実習で訪れた精神科。言葉や身体的なコミュニケーションだけでなく、〈ものづくり〉を通して「その人らしさ」が垣間見える点が非常に面白く、私の目指すべき道はこれだと思いました。しかし、求人がなかなか出ず…。クラスメイトの就職がどんどん決まり、焦りや不安がつのるばかりでしたが、「〇〇病院に問い合わせてみたら?」「〇〇施設で求人が出そうだよ」など、こまめにアドバイスや情報をくださった先生方のおかげで、念願の精神科のある病院に就職できました。 この仕事がしたいと思ったら、あきらめないで粘ってみてください。手厚いサポートで、きっと良い出会いがありますよ。
脳卒中などの疾患や骨折からの回復期の患者さんを担当しています。目標は、退院後にその人が今まで普通にしていた生活動作や家事、仕事などを以前に近い形で出来るようにすること。手先の運動や実際の料理などの家事、シミュレーターを使った自動車運転の訓練など1人ひとりの「生活」に合わせたリハビリを行っています。
患者さんは最初「できないこと」の方に意識が行きがちですが、できていることに注目すれば、そこからやれることが広がっていきます。そのため、視点を変えて前向きに取り組めるような会話を心がけています。
患者さんは多くが人生の大先輩。「人生の先輩にこちらが教えていただいている」という気持ちで接しています。OTである自分をうまくリハビリに生かしてもらえるよう、自分ならではの関わり方で支えていきたいです。
強く印象に残っているのは「作業=その人の役割」という先生の言葉。したいこと、人に求められていること、同じ「作業」でも人によって意味合いが違うということです。
就職当初は、患者さんとうまくコミュニケーションできませんでした。ある時、患者さんが「孫に煮物を作ってあげたい」という想いでリハビリを頑張っているのだと話してくれました。「患者さんの人となりや想いを理解してこそ、真に患者さんを支えることができるのだ」と仰った先生の言葉を日々かみしめています。
実際PTとOTでは違う視点が必要です。たとえば「歩く」という動作について、PTは体に負担のない歩き方ができているか?という視点で見る一方、OTはどうして歩くのか?という視点で見ます。その人にとって「歩く」ことにどんな思いがあるのか、そういった背景も大切にしていきたいです。
実習では、直接患者さんに関わる中で、声がけの仕方ひとつで患者さんの気持ちも反応も違うということを学びました。また医師や看護師とコミュニケーションを取りながら、連携してやっていく大切さ、さらに治療以外にも色んな業務があって、「仕事をする」大変さを肌で感じることができました。
実習の期間中は学ぶことが多く心身ともにハードなので、良く寝て、体調管理をしっかりすることが大事です。でも困ったことがあったら周りの人に相談できるので、安心して臨んで欲しいですね。